米菓製造・販売

酒田米菓株式会社

山形県酒田市

代表取締役社長 佐藤栄司

【酒田米菓株式会社:昭和41(1966)年創業。山形県で米菓および生地(せんべい、だんご他)製造販売業、OEM事業、観光事業、テレアポ事業などを行っている。】

CCSを知った経緯についてお聞かせください。

 グルコンの中で知りました。グルコンの中で課題を出していった時に、池本さんから「こういうものがあるよ」とご紹介いただき、役員など4人でセミナーを受けました。

その時に佐藤さんの会社が抱えていた課題というのはどのようなものだったのでしょうか?

 当時抱えていたのは、とにかく「人」の問題です。モノが壊れたならその部品を交換すれば良いだけですが、人を交換するというのはなかなかできません。特に私が社長になって2年目あたりから、私と社員たちとの価値観の差というものが顕著に表れてきました。私が思い描いている会社の方向性と社員たちの考えるそれとの大きなギャップにいつも悩まされ、池本さんにも人の問題ばかりを相談させていただいていました。
 その問題をどう修正していったら良いのか?と考えていく過程で、池本さんから「価値観の共有を目指すならCCSを作成したらどうか」とアドバイスをいただき、気持ちが動いたのです。
 私は創業70年のこの会社を2015年に親族から引き継いだわけですが、それ以前はまったく別の業種で個人事業主として仕事をしていました。その頃は「自分が食べていければ十分だ」というスタンスでしたね。ところが、この会社を引き継ぎいざスタートしてみると、徐々に人と人との考え方の違いの問題が浮き彫りになってきました。もちろん、私自身もそれまでの考え方を180度変えなくてはなりませんでした。

 

社長に就任されてから、酒田米菓の業務等を一から学ばれたのですか?

 いいえ、そうではありません。もともと米菓に関わる環境で生まれ育ちましたし、別の仕事をしていた時も酒田米菓の役員をしていました。過去には業務に深く携わっていた時期もあります。ですから、製造工程からすべてを把握していますし、逆に言うと、今すべての工程を知っているのは社内でも私だけではないかと思います。そういう意味では、社長になる上で困るようなことは何もないと思っていたのです。

 

社長に就かれた当初は会社はどのような状態だったのですか?

 当時の従業員は60人ほどでした。私が就任して1年目は、全社あげて取り組みたいことがあったので、それに集中するうちに過ぎていきました。具体的には「観光工場」への取り組みだったのですが、その目標に向かって皆一丸となって進みました。もしかしたらその時にもどこかに価値観の違いというものは潜んでいたのかもしれませんが、それに気付かないほど無我夢中の毎日でした。その事業が完了し工場を運営していく段階になって、色々な問題が浮上してきたのです。

観光工場完成後の会社の状況は如何でしたか? 

お陰様で今では「日本一長い工場見学」として皆さんに楽しんでいただいていますが、工場完成直後は、誰もが知識も経験もなく、試行錯誤しながら観光会社、旅行会社などへ働きかけを行う日々でした。少しずつ結果も出始めてはいましたが、スピード感がなく、それまでの米菓製造の流れ作業とは違った、営業の難しさというものを味わいました。製造過程にいた従業員も営業に回らなくてはいけないという状況もあり、そこから色々な人の問題が出てきたのです。

 

CCSを導入しようと思った決め手は何だったのでしょうか?

 グルコンで周りの方々が作成しているのを目にしていたこともありますが、一番のきっかけとなったのは、プラスワンインターナショナル(株)の新開社長のお話しです。新開社長から「価値観の共有」ということをお聞きしてとても納得し、「いいなあ」と思ったのです。彼の会社がどんどん成長している現実も目の当たりにし、CCSに強く惹かれるようになりました。

 

CCSの作成で苦労した点はありましたか?

 それほど苦労は感じませんでしたが、一番考えたのは「方向性」の部分ですね。これは今も常に考え続けており、来月もまた少しCCSを改編しようと思っています。ですが、それも基となるものがあるからできることでして、一番はじめの工程、つまり池本さんから渡されたシートの項目を一つ一つ埋めていく作業というのは、やはり大変でしたね。今まで突き詰めて考えたことのなかった概念的なものを言語化することは、簡単ではありませんでした。
幸いCCS作成時のメンバーにも恵まれ、抵抗感のようなものはほとんどありませんでした。というのも、グルコンに参加する中で「自分の右腕となる者を作らなくてはならない」ということは頭にあったので、人選の根拠として池本さんからESP診断も教えていただき、この診断をおこなった上でのメンバーだったからです。私と息子の他に二人の役員がメンバーでしたが、彼らがもともと意識が高かったこともあり、問題なく進めることができました。
何とかコロナ以前にCCSを確立できていたので、コロナ禍においてもそれを乗り越えるだけの気持ちの余裕があったのだと思っています。

CCSを導入して、従業員に何か変化はありましたか?

 アンケートをとったわけではないので実際のところはわかりませんが、最初は違和感もあったと思います。CCSを導入してから4,5年が経ちますが、当初と比べると従業員たちの意識もずいぶん変わってきたと感じています。
 一番変化を感じるのは「事例共有」の場面です。これは最初と今とでは全然違います。話し方が如実に上達した者、人前で話すのが苦手だったのに上手に話せるようになった者……とにかく、事例共有によって皆が見違えるような変化を見せてくれた驚きはとても大きいです。事例共有の中でそれを自分の仕事に置き換えたり当てはめたりしていることがよく伝わってくるので、一人一人の考え方の変化や成長が実感できるのです。
 離職率も減ったと感じています。以前は年間10人程度の離職者がいたのですが、今はその数も半減しましたし、離職の意思表示をする社員に向き合うときにもCCSを用いることで、結局、離職を防ぐことにつながったケースも何件かありました。

 

CCSをどのような場面でどのように使われていますか?

 採用時には、「うちはこういう考え方ですよ」とCCSを提示しています。また、社内でおこなっている勉強会の場で、CCSをテキストのように用いて課題を出すこともあります。例えば先日の製造部門の勉強会では「夢を持つ」ことをテーマにしました。最近は夢をもたない人がとても多いと感じていたからです。2ヶ月間同じテーマで勉強会を続けたところ、ほとんどのメンバーが夢について自分なりの内容を書けるようになりました。CCSを基準に勉強をしたり、私自身の考えをCCSに則って伝えたり、大いに利用価値があるものだと実感しています。
 また先ほどあげた離職希望者への対応に際しては、私は、夢や目標の部分をじっくり話し合います。「辞めてどうするのか」「やりたいことは何なのか」と本人の思いを聞いていくことから始め、「そのことが会社の仕事とどう関係してくるのか」と、時間をかけて本音を引き出すようにしています。
一度で本音を聞くことはなかなかできませんが、何度か話し合いを重ねていくと、本人が抱えている悩みの核の部分が見えてくるので、それを受け止めて、個々に応じたケアをきちんと考えていく。こうした過程を経ることが、衝動的に辞めるケースの激減につながったのではないかと思います。また、その過程で浮き彫りになった会社の問題点は、きちんと改善してCCSに反映させていくことで、皆の信頼感、安心感というものも強まるのだと思います。ただし「お給料が安いから辞めたいです」という人には「じゃあ、もっとお給料が高いところに行ってください」と言うしかありませんが(笑)。

 

CCS導入後、具体的に売上や利益などは変化しましたか?

 コロナ以前は売上が毎月右肩上がりで好調でした。コロナ禍ではやはりなかなか厳しいですが、それでもこの夏くらいからはまた右肩上がりの良い傾向が見えてきました。それにはやはり、一人一人が主体的に考えるようになったことが大きく関係していると思います。もちろん私もグルコンで売上についての課題を出していますし、世の中の動きも少し前向きになってきたということもありますが、社内の皆が自分がやるべき事を一生懸命やってくれるので回転が速くなってきたのだと思います。

 

コロナ禍でも、CCSがあることで楽になったと感じることはありますか?

 私にすべての決断を求めるのではなく、自分たちで決められるようになったので、負担が軽減し、とても楽になりました。すべての仕組みを作ったわけではないのですが、私が主導する勉強会のほかにも、部内で勉強会を企画して自主的に学んでいこうとする姿勢がでてきましたし、時には私の提案を先取りして、すでに実行に移しているようなこともありました。私が指示をしなくても自発的に動くようになったことの背景には、やはりCCSの存在がありますね。CCSが皆の意識を変え、それが行動の変化として表れたのだと思います。皆が迷いなく行動できるようになり、お陰様であれだけ困っていた「人」の問題もほとんどなくなりました。当時相当な時間を割いていた1 on 1ミーティングも、今ではほとんど必要がないくらいです。
「もしCCSがなかったら……」と考えると恐ろしいですね。また以前のような状態に戻ることを想像すると恐いですし、もしそうなったら私は会社経営を放棄してしまうかもしれません。あの苦労を味わうのは、もうこりごりです。CCSは、もう絶対になくせないですね。

 

現在、佐藤さんはCCSの更新にどのような形で関わっているのですか?

 今は3ヶ月に1回、総務でアンケートをとって更新するという作業をおこなっており、私は直接的には更新に関わっていません。ですが、アンケートには必ず目を通すようにしていますし、会議であがったことで必要だと思うものは、CCSに入れるように指示しています。私が関わるのは、会社の方向性や理念に関する根本的な部分だけで、実際の業務に関する内容は、現場に近い役員や工場長などが中心となって検討し更新作業をおこなう、というのが現在のスタイルです。

 

CCSを使って今後取り組みたいことなどはありますか?

 CCSをもっと広めていきたいと思っています。とくに地方において特徴的なのかもしれませんが、経営者自身が自分の会社についてあまり深く考えていないように感じられることが少なくないからです。2代目、3代目ともなると、「引き継げば、それで安泰だ」というような呑気な方も時に見受けられます。世の中がこれだけ変わってきているのに、考え方が変わらない人というのは意外に多いと感じています。
 私は取引先に自社のCCSを実際に見せて内容を説明したり、他社の方から社内の問題を相談された際に「うちはCCSを作っているから、それに則って対処している」と、CCSを参考にしてもらうこともあります。
 私は年齢的にも実務はそろそろ引退しようかと思っていますが、地方において、CCSを普及させていくような活動をしていけたら……というより、やっていかなくてはいけないな、と考えています。もちろん、自社がコロナで低迷した部分をしっかり黒字に立て直し、きちんと整えてから引き継ぐことが大前提ではありますが。ゆくゆくはCCSを用いて地域貢献をしていくことを、心に思い描いています。

 

CCSをどのような業種や立場の人におすすめしたいですか?

 商工会議所や法人会などいろいろな会がありますが、そういうものに参加している経営者の方が、本当に真剣に会社のことを考えているのかどうか、ときおり疑問に思います。もちろんしっかり勉強している団体も多いでしょうが、中には親睦会が中心のような団体も存在します。目的が違う、と言ってしまえばそれまでなのですが、「勉強する場」をもっともっとつくり出していかないと、この地域全体が良くなっていかないのではないか、という危惧の念があるのです。ですから、トップに立つ人、特に親族から事業を継承した人などには、CCSで自社の理念についてよく考え、学んでいくことをすすめたいです。私自身も、CCSの奥深さを日々感じており、さらに学んでいかなくてはいけないな、と思っています。

 

CCSで一番良いと感じるのはどういう部分でしょうか?

 概念的なものを「見える化」できる点です。3ヶ月に一度社長の思いを更新することで、社員たちも私の考えていることを活字としてしっかり確認できます。ただ口頭で話しただけではすぐに忘れられてしまいますよ……多分1時間もしたら(笑)。
 いま「見える化」が1番良い点だと申し上げましたが、そもそもCCSを作ったこと自体が、1番良かったことと言った方がいいかもしれません。CCSを作って方向性をしっかり持っていたからこそ、コロナ禍でも気持ちが折れることはありませんでした。
この先もCCSをもっと意味の深い、良質なものにしていくために、常に学び向き合っていきたいと思っています。

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