食品・食品材料卸販売

株式会社カクノ

静岡県静岡市

代表取締役社長 野村 悠介

【株式会社カクノ:明治初(1868)年創業。静岡県で砂糖や小麦粉等の食料品原材料、食品加工、製菓材料の卸販売を行っており、野村悠介社長は第17代目。】

CCSを知った経緯についてお聞かせください。

先にグルコンに参加していたので、CCSの存在は初期の段階から知っていたのですが、導入はしていませんでした。うちには時期尚早だと思っていたからです。

時期尚早だと思った理由は?

グルコンに参加したことで改善すべき問題がたくさんあることに気づいてしまいました。まずは、その問題を解決しながら、価値観を共有できる社員をある程度増やして、次にCCSに取り掛かろうと思いました。

 

その時に抱えていた問題というのは?

 営業部門に関して一言で言うと、会社のルールではなく個人のルールで活動をしていました。弊社は、社歴が長く営業マンが個人商店のように動くことが慣例化していました。そのため、ルールが人によってまちまちで、会社としてのルールがなかったのです。例えば、商品の販売価格の設定は、担当者が自分で決められるという仕組みになっていたので、私がしらないうちに赤字で契約をしてしまうということがありました。

 

お父様の代からそういう感じだった?

 そうですね。父が先代の社長なのですが、父は仕事ができる人だから、ほかの社員についても、自分と同様にできると考えています。だから、すべてのルールが「できる人」のルール設定になっていました。ところが実際は先ほどの通りで、私が社長を引き継いでからチェックをしていったら、ルールは守られておらず、むしろ悪用されていたのです。

 

CCS導入が見えてきた辺りで、辞められた方もいたとか。

残念なことに辞められた社員もいました。それは、間違いなくCCSの効果だと思います。CCSの本来の目的ではありませんし、私にもそんなつもりはなかったのですが、結果的にCCSの副産物だったと思います。具体的には、今までのような感覚では働けなくなったことが理由だと思います。おそらく、「管理されている」という感覚になったのでしょう。今まで完全に自由だったものが、そうではなくなりましたので、自然なことだと思います。ただ、以前の状態でも全員が結果を出す組織であれば、むしろそれが理想ですし、そうであるべきだと私は思います。しかし、結果は逆だったわけですから、ある程度組織のルールをきっちり設けないと、組織で成果をだすことはできないんじゃないかと思います。

 

CCSを導入しようと思った決め手は何だったのでしょうか?

私が社長になる1年くらい前に、社長に就く準備のひとつとしてCCSを導入しました。自分がトップにならなくてはならないという状況下で、共通の価値観、共通のルールが欲しかったんです。

私は、よくスターバックスコーヒーに行くのですが、スタバの方はみなさんルールとか接客方法とか、本当によくトレーニングされているな、といつも思っていました。かたやうちの会社の場合は、ルールはないし、営業方法もバラバラ。トレーニングも十分にできていませんでした。自分とは違う価値観で、担当者が決めたことでも、お客さまから見ると社長である私の考えだと思うだろうと。これではお客様の信頼をあっという間に失ってしまうのではないかという危機感があったので、何か統一の価値観を示すものを作りたいなと思ったわけです。

 

CCS作成キャンプに一緒に参加したメンバーの基準は?

私とのコミュニケーション頻度が高いメンバーと会社の改革の中心になって欲しいメンバーを選抜しました。

 

CCSの作成キャンプで苦労した点はありましたか?

私は、池本さんの考え方に慣れているのでスッと落ちてくる感じがあったのですが、池本さんの考え方は馴染みがない人からするとちょっとレベルが高すぎるというか(笑)。作業をしていてギャップを感じたり、抵抗感があるのかな、というメンバーも多少はいました。

 

CCSを社内に導入いただく際、工夫したことなどはありますか? 

ある程度、社内からの抵抗があるだろうということは予想されたので、池本さんに来ていただいて、社員に対して、CCS導入の説明会をしてもらったことです。そこで、社員の方に「今後は、CCSに沿った経営方針で行くので、一緒にやっていけるのかを考えて欲しい」と言ってもらいました。それで、ダメだと思った人が、実際に辞めてしまったのです。

しかし、今は結果的に良かったと思っています。社員全員が同じ場で「そういうものがカクノに導入されるのだ」という認識を持てたことで価値観の共有がもたらす効果を理解できましたので。

 

CCSを導入して、変化が大きかったのはどのような部分でしょうか?

 CCSの作成に関わってくれたメンバーは、それ以外のことでも積極的に自分たちで動くようになったことです。すごく自信がついたメンバーもいて、良い変化を実感しています。CCSの中の項目が自信につながったというよりは、日常的に読んだり考えたりすることで、彼ら自身が「考える」ようになりました。例えば、事例共有は撮影する場面で、適当に済ませることもできるわけですが、それをアップして他のメンバーに見せるという目的があります。そこを理解して、きちんと伝わるように作戦を考える、準備をする、ということの重要性がわかってきたのではないか、という気がします。

もちろん、CCSの行動指針通りに全員が動けているかというとそうではなく、できていない社員もいるのは事実です。しかし、行動指針に沿って働こうと努力する社員がいますし、今まで報告など全くしなかったのに、放っておいても自動的に報告をしに来るようになった社員がいます。これは、CCSが染み込んできていることで起きた最大の変化です。

 

具体的に売上・利益などはどう変化しましたか? 

大型の売り上げの損失というものが著しく減ったと感じています。今まで月に1、2件ぐらいだったのが、半年で1件くらいになりました。CCSによって、役割分担がより明確になり、仕組みを作って仕事をするようになったことが具体的に影響していると思います。

また、社員の給与に関しても、評価制度を変更して、CCSに沿って働いている社員はきっちり業績が出て、報酬に反映されるようになりました。

 

離職率が低い=良い会社、か?

私は、離職率について、単に低い=悪い、高い=良いと考えてはいません。例えば、この1~2年でベテランの営業が2人辞めていますが、業績が下がっていないのです。それよりもCCSの作成に関わってくれる社員と仕事をするほうが、長期的に会社の業績は伸びると考えています。むしろ、価値観が合わないベテラン社員がいるよりもCCSによって全体がより働きやすくなったと言えます。

私の場合、池本さんからずっと指導を受けている中で、「ある程度人を入れ替えないとどうにもならないでしょ」と言われてきたので、CCSで明確になった価値観に沿って働く社員を揃えて組織を作っていこうとしています。

そこで、採用の際には、2次面接でCCSを見せて「うちはこういう価値観ですけど大丈夫ですか?」と確認しています。すると多くの人が「当たり前のことですよね」という反応をします。その当たり前のことを当たり前にやるのが大変なのですが(笑)。実際にCCSを読んで賛同し、現在活躍している社員もいます。彼らはCCSを読み込んでいますし、私も『CCSがわかる本』をバイブルにしなさいと話しています。

 

CCSが入ったことで社長ご自身の中でも考え方の変化はありましたでしょうか?

CCSが導入された今となっては、逆にこれがない会社はどうやってマネージメントしているのだろう、と思ってしまいます(笑)。CCSは言うなれば企業の骨格のようなものです。うちの未熟な社員たちでも「ここは社長に相談しなくてはいけないことだよね」ということが、ある程度考えられるようになってきている気がします。中小企業は大手と違って人材のレベルも高くはありません。うちは田舎なので、特にそうだと思いますが、そういう中で戦っていかなくてはいけないので、こういうルール、決め事がないと戦えないと感じています。CCSがないという状況が、今はもう信じられません。社長の役割は、会社という組織をマネージメントすることですが、CCSなしでマネージメントをすることは考えられません。

 

CCSに企業規模や業種の向き不向きはあると思いますか?

規模にかかわらずどの会社でもCCSはあった方がいいと思います。本当は大きい規模の方こそあった方がいいと思います。私が以前に勤めていた大きな会社でも、CCSがあったら行動が違っていたと想像できます。仕事しない中年社員が評価されている理由が、休みの日に部長に付き合って飲みに行っているからであったりする。でも、私はそういうことはしたくない。CCSがあれば、「それは違う」と明確になるわけです。逆にそれが必要なら、それをルールにすればいいだけです。

業種についてもどんな業種でもCCSがあった方がいいと思います。例えば、うちのお客様で言えば、工場系のお客さんは100%あった方がいいと思います。工場で必要なのは衛生観念や、品質管理帳、生産性、品質の安定など、挙げればきりがありません。長く働いている方がいると、基準がその人によってしまうこともよくあります。

また、今の時代は60歳の方から20歳の方までいて、育った環境が全員違うので、価値観が統一されていません。会社として「こういうのが共通で考えたいことだよ」と伝える上でもCCSは大事なのではないかな、と思います。

 

職人さんが多い業界はCCSの導入時にかなり抵抗があるんですが、そういう話を聞いて客観的にどう思われますか?

 抵抗があっても推し進めるべきだと思います。ただ、CCSを入れただけではだめで、同時に必要なのは面談だと思います。それもかなりの頻度で必要だと思います。

CCSを入れたことで事例共有やメンテナンスなどはありますが、それだけでは不十分で、社長とメンバーが直接コンタクトする時間がないとダメだと思います。相手がどういうことを考え、悩んでいるか、価値観のより深いすり合わせというか、そういうところを対処しないと根本的に変わらないのではないかなと思います。

もし、職人さんが多い業界でCCSがうまくいかないとすれば、それは職人さんたちのやり方をよしとしてしまっているからで、もっと根本のハートのところでつながるようなもの、つまり面談が必要でしょう。

 

野村さんの会社は食品原材料などを扱っていますが、業界特有のCCS需要はありますか?

 うちの業界は古い体質なので、CCSを導入しているというのは「変わっている」と捉えられているかもしれません。結果からすると業界全体が減収傾向の中、うちは業績が落ちていないので、CCSが効いていることは間違いありません。

業界の体質が古いので、IT化が遅れており、仕事のやり方が属人的になっています。属人化をなくすには、仕事を分解して、誰にでもできる仕組みに組み替える必要があります。その需要においても、CCSは有効だろうなと思います。

 

今後CCSを有効に使いながらどのようなことに取り組まれていくご予定でしょうか?

 今後は、営業マニュアルのような役割も持たせたいと考え、適宜追加しています。さらにその先では、すべての業務を網羅するマニュアルになれたらいいなと思っています。会社としての共通の価値観がありながら、部署ごとに目指すところが明確になっている、というイメージです。そうすれば、拠点が増えたり、例えば外国人を採用したりということがあっても対応できるようになります。特に今後は優秀な外国の方や女性の採用も考えていて、それに伴ってCCSも英語版を作るなど、変化していくと思います。

 

ここまでいろいろお聞きしましたが、CCSについてこれは言っておきたいということはありますか?

 中小企業は絶対にCCSを入れるべきです。CCSに代わる方法があるなら教えてくれ、という感じです。

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