まずは、CCSを知った経緯についてお聞かせ下さい。
池本さんの何かのセミナーに参加したのが最初のきっかけだと思います。その後、グルコンにオブザーブとして参加したのですが、その時は「このようなコンサルタントの方はどういうコンサルティングをしているのだろう?」と、どちらかというと自分のスキルアップのような意味合いで勉強していました。それから徐々に、自分のスキルで何とかするというより、自分が関わらなくても売上が伸びるようにしていく、ということの方へ興味を持つようになりました。
「自分で何とかやろう!」と会社の中で頑張ってもまったくうまくいかない。結局、一人になった時の方が売上は増える、というような状況から、また少しずつ業務を委託するようになったのです。そうすると、自分で動かなくてもいいような組織にするための課題が見えてきたのです。
池本さんのお話を改めてお聞きして「自分は色々なことをきちんと共有できていなかったのだ」ということに気付かされました。事業計画書などもしっかり作成しなくてはいけない、と池本さんの事業計画作成講座を購入しました。事業計画書の勉強を始め、CCSにとても興味を持つようになりました。CCSオンライン講座だけでも理解はできたのですが、実際に自分一人で作成するのはかなり大変そうで、何年かかってもできなのではないか?と思っていた矢先、メルマガでCCSのセミナーが開催されることを知り、参加したという流れです。
その当時の課題はどういうものでしたか?
少し人員を増やそうかな、という思いはあったのですが、スタッフ2人の状態でも上手くいっていませんでした。それなのに、在宅勤務の人を増やして、まとまるのだろうか?という不安がありました。在宅勤務の方への仕事の頼み方も、自分が抱えている仕事の中の一部の「作業」を依頼する形にとどまっていて、「仕事」を任せるという形ではありませんでした。つまり、仕事全体は自分が管理していなくてはならない状態です。仕事を振ることができないので「脳内リソース」は結局、全部持っていることに変わりなく、作業の確認などもあり、やっぱり仕事は減らない。Webの世界ですから仕事のやり方も色々工夫できるはずですが、同じことの繰り返しで発展も見られず、私が考えていることとスタッフの考えの違いが大きな課題として存在していました。
オフィスを持たない業務委託形態なので、毎朝のブリーフィングなども特に行なわず、最初に作業を説明して委託し、戻ってきたものを私がチェックするという感じになっていました。
CCS導入について本気で考えるようになったきっかけは?
当時業務を委託していたのは、私の個人的な知り合いでした。池本さんのもとで学ぶ過程で、価値観などの問題のほかに、知り合いに業務を依頼した際に発生する問題についても考えるようになっていました。というのも、私は、その人と価値観がそれほど違うとは感じていなかったのですが、仕事以外の場で話しをしたときに、「あなたの考えていることがわからない」という発言がその人の口から飛び出し、驚いたことがあったからです。もちろん、悪意を持った言い方ではありませんでしたが、その時に「ああ、こちらの考え方がまったく伝わっていない中で仕事をしているんだな」と改めて実感しました。言い方を変えれば、「何をやっているか、どういう風に進もうとしているのかがまったくわからない中で、スタッフに仕事をさせていた自分」に気付いたのです。
そこで、そのスタッフには「どんなことをやりたいのか」「何を勉強したいのか」を聞き、自身のスキルアップを後押しすることを考えたのですが、返ってきた言葉は「会社がどういう方向を目指しているのかわからないから、自分も何を勉強したら良いのかわからない」というものでした。私は、本人のやりたいことが最初に出てくると思っていたのですが、相手は会社の方向性を最初に聞いてきた。これこそ「価値観の違いだ」と気付いたわけです。そういう出来事があり、会社の方向性をきちんと定めないと動けない人もいるのだ、とわかりました。そこで、今まで渡していた作業マニュアルではなく、会社の方向性まで含めたCCSを作成しなくてはならないと思うようになったのです。
こちらが良かれと思って与えた勉強の機会が、かえって本人の負担になっていた、ということもありましたし、「価値観の違い」を実感する出来事が続いていました。池本さんがメルマガなどで書いている「価値観が違うと行動も変わる」ということには、心底共感しました。
CCS作成メンバーはどのような方たちだったのでしょうか?
すでに一緒に仕事をしていた仲間です。新しいことに対しては躊躇するタイプのメンバーもいましたが、本来、皆協力的であったこともあり、池本さんのCCSの動画を事前に見てもらうなどして、何とか参加してもらいました。
CCSを作成する上で大変だったのはどのようなことでしたか?
CCS 1dayキャンプである程度CCSは形になると思っていので、そこでの作成やその後苦労することはありませんでしたが、敢えて言うならキャンプへ参加するまでが一番苦労しましたね。キャンプへ参加してしまえば、そこには他社のサンプルも沢山ありましたし、サンプルを参考にしながら作業を進めていけるので、作成上の課題感はほとんどありませんでした。
CCSの更新については、最初は私がアンケートを集計して、たたき台を出し、皆にフィードバックをする、ということを行っていてかなり大変だったのですが、いつの間にか皆がその作業も助けてくれるようになり、今では本当に楽になりました。
業務委託の人数は増えましたか?
少しずつ増えています。CCSの1冊目を作成した当時は、作成メンバー3人のほかにスタッフが2人ほどでしたが、少人数だったこともありCCSに対する抵抗感というのは特にありませんでした。その後もスタッフは増えていますが、CCSを配布した際も「そういうものなんだ」という感じで受け入れてくれます。その点は規模が小さい段階でCCSを導入したメリットではないかと思います。
スタッフ採用の際にCCSを利用されていますか?
はい。採用の場面でこそCCSは絶大な効果を発揮していると感じています。CCSを作成してまだ日が浅いころは、「ビジョン・ミッション・バリュー」のうちのバリューすら明確なものになっていない状態でしたが、そういうことをじっくりと考えるようになり、「幸せな生活を送るために仕事をする」という自分の究極の目標が明確になりました。「幸せな生活」のためにする仕事でストレスを抱えるのは本末転倒ではないか?という問題意識から、「平和な環境で仕事をすることが最善だ」と考えるに至りました。
他の会社の話しですが、在宅スタッフのチームのマネージャーの日報によると、1日の業務の7割近くが、人間関係のトラブル仲裁や相談などだったそうです。「非生産的」としか言いようがありませんよね。そのような話しを聞くにつれ、平和な職場環境で、考え方を一致させて仲良く働くということは、会社にとって大変重要なことだと心から思うようになったのです。
ですから、「一番重要なのは、平和と一致です」と採用の際に必ずお話していますし、「ここで働けてよかった」といってもらえるような職場を目指しています。CCSを作成したばかりのころは、そこまで明確に言語化できていませんでしたが、更新のたびに自分自身の考えを突きつめていくなかで、「平和と一致」という言葉にたどり着きました。また、それにともなって「謙遜さ」「利他的」という要素も欠かせないとわかってきました。
最初の頃は、採用基準もCCSで明確にできていなかったので、何となくZoom面談をし、その印象から感覚的に採用していたこともありました。ですが、実際採用後の働き方を見ていると自分の予想に反することもあり、「感覚頼りではだめだな」と痛感することが多くなっていました。そこで思い切ってZoom面談を辞めることにしたのです。
これまでは、面談の最初の30分ほどはいつもこちらから会社の説明をしていたのですが、その部分を動画にして予め視聴してもらうことで無駄を省きました。動画中ではもちろんCCSの一部も紹介しています。そして、さらにその動画に対する感想をグループチャットで聞くかたちにし、これから仕事をしていく上で、一番のコミュニケーションツールとなる「テキスト」でのやりとりで見ていくことにしました。
すると、おもしろいことに、動画を見て会社の方針に同感してくれた人からの返事の熱量が全然違うのです。グループチャットの内容で、会社の価値観に共感してくれている人とそうでない人との差は歴然とわかります。もちろん、熱量だけで判断するのは危険な側面もありますが、そこはCCSで採用基準を明確にしていますので、誰がみても納得するかたちの採用につながっています。池本さんのセミナーでは、中小企業の採用は必ず社長が面接するように、と仰っていますが、私の会社ではCCSで細かい基準を作っているので、正直に言うと、私が直接会わなくても他のスタッフが私と同じ判断をしてくれるので、助かっています。
現在抱えている問題点、苦労していることなどはありますか?
最初の頃に採用したスタッフは、私の価値観と完全には一致していない人も多く、途中で辞めていくこともあります。それはCCSで掲げた会社の目指す方向と、本人の仕事に対する考え方の違いが、やはり大きいようです。
CCSを導入して変化が大きいと感じたのはどのような部分ですか?
帰属意識が高まったように感じます。業務委託なのですが、皆が「自分の仲間」という意識を持ってくれるようになりました。会社が目指すゴールはどこなのか?
ということをフリーランスのスタッフ全員が考えています。「フリーランスの集団」という世間一般のイメージとはだいぶ違うと思いますよ。全員が完全に独立して仕事をしているわけではなく、育児の傍らかつての経験を活かして少し仕事をする、という方も多いので、そういう意味でも、仲間意識を持ちやすい面があるのではないかと思います。
CCSの更新は、どのようなメンバーで行っているのでしょうか?
会社の中心となって一緒にやっているメンバーが、定期的にアンケートをとって進めてくれています。最初は私がアンケートを配って回収し内容を検討していたのですが、今ではアンケートに回答する側になりました(笑)。一応、私が最終チェックをするのですが、それも「ここをチェックして下さい」とすっかりお膳立てができていて(笑)。自分一人で更新作業をするのが少し大変だと感じ始めた頃に、スタッフに軽く声をかけたところ、快く作業を引き受けてくれ、他にも得意そうなメンバーを募って、進めてくれるようになったのです。もちろん、私自身が気になったことなどは、思い出したときにいつでも書き留めるようにしており、皆に内容をチェックしてもらってCCSに反映させるかどうか相談をしています。
CCSを作ったからといって、人が変わるわけではありません。フリーランスといえども、それぞれタイプが違い、自分から積極的にどんどん切り開いて行く人もいれば、指示通りのことを丁寧に仕上げる人もいます。社員ではなく業務委託という立場にあって、どこまでやっていいのか?と悩む人が多いと思うのですが、CCSによってそれが明確になると、その中で皆が自発的に動けるようになります。そうしてメンバー同士が良い刺激を与え合いながら、同じ方向に進んでいける。これは、私一人が必死に動いたところで得られる結果ではありません。会社のコンセプトにある「謙遜さ」「利他的」ということに共感した人たちの集まりであるからこそ、それが実現できているのです。
実際CCSを導入したことで売上や利益、給与などに変化はありましたか?
はい。CCSを入れてすぐに売上が倍になりました。私自身、新規のお客様を獲得することが大変になってきたので、新規はストップして、既存のお客様との取引で売上を伸ばすことに力を入れていたところだったのですが、私がいなくても売上が伸びるような仕組みをつくる工夫をしました。もちろん、私が動けばその分利益が上がるのは事実ですが、それをしなくても、売上が倍増し、会社が成長したということはとても嬉しい変化でした。
既存のお客様に絞って対応するなかで、お客様の業績が上がり、広告の量やサポート業務などが増えていきました。CCSを作成したことでチームとしての一体感が生まれ、私がいなくても、同じ方向に向かって皆が積極的に動いてくれるようになったことが最大の理由だと思います。普通の業務委託では、ここまでの意識は持てないのではないでしょうか。
個人の気質を尊重しながら、スタッフ同士が助け合う場面もとても多くみられるようになり、会社全体として業務が加速していると感じています。また今後も、CCSをどんどん広げる形で、色々なことに取り組んでいきたいと思っています。
CCSに会社の規模や業種の向き不向きはあるとお考えですか?
私の感覚で言えば、まだ人があまり多くない段階で導入すると、一気に成果が出るのではないかと思います。すでに大きい会社にCCSを入れるとなると、たくさんの人たちに納得し協力してもらうために、かなりの努力と時間が必要になってしまうと思います。私の会社の場合は本当に人数が少ない段階で導入していたので、たった1年余りで普通では考えられないほど売上が伸びました。その間に、私が入院するという出来事もあったのですが、ほとんど業務に支障はありませんでした。もし、CCSを入れるのが少しでも遅れていたら、私は入院して無事に手術を受けることができなかったかもしれません。今日という日を迎えることができて、本当によかったです!(笑)
小さい会社にはCCSは必要ない、という声も聞かれますが。
小さい会社なら言えば伝わるだろう、という考え方だと思うのですが、逆に言うと「言わなければ伝わらない」ということですよね。そうすると、上の人間は常に言葉に出して言わなくてはならなくなる。同じ事でも何度も言い続けなくてはならず、また、言ったところで本当に伝わっているのか、という問題もあります。池本さんのセミナー資料で、「何度同じことを言えばわかるんだ?」というセリフがでてきますが本当にその通りです(笑)。しかも、理解の仕方にもばらつきがあり、お互いが予測や想像で価値観の違いの溝を埋めようとすることは、ストレスになりますし、無駄なエネルギー消費です。私自身もそのことを実感していました。
社長が言わなくても、皆が同じ方向を向いて力に変えていくための仕組みがCCSだと私は考えていますので、小さい会社だから何とかなるだろう、という理由でCCSが不要だとはまったく思いません。先日相談に来た方も、「9人程度の小さな会社なのに、思うように意思疎通ができずうまくいっていない」という悩みをもっておられました。社長一人がいくら積極的に動いても、会社としては限界が来てしまいます。そこを理解されていない方が意外に多いと感じます。自分が起業したときに抱いていた理念と現状が一致しているのか、自分が本当にやりたいこと、やるべき事はなにか、ということに向き合い、その価値観を社内に浸透させて、結果的に社長がいなくても回っていく会社へ成長していくためにも、CCSを作成するのはとても意義深いことだと思います。
CCSの作成で大切していることば
聞こえが良く表面的なものではなく、社長として、一緒に働くメンバーたちの幸せを本当に大切に考えているのだ、という意思が伝わるような言葉を選ぶべきだと考えています。そうでなくては、働く人たちも本当に協力したいという気持ちが沸いてこないでしょう。社長であってもやはり、「利他的」で「謙虚さ」をもっていなくては共感も得られませんし、社長がいなくても回る会社に成長していかないと思うのです。
結局、社長がどこまで本気で働く人のことを考えているか、ということが、社員であろうと業務委託であろうと、働く側の人たちの熱意の源になるのではないかと思っています。それが、私の大切にしていることです。時には、社長がひとりの社員のために動くくらいの姿勢も必要なのではないでしょうか。
本当に協力してもらうためには、協力したいと思えるような内容を持った会社でありたい。それには、CCSによってその内容をしっかり明文化していくことが大切です。私の頭の中にだけあったものが、今ではCCSという形をもち、皆が近寄ってくる磁石のような働きをしているように感じられます。
いま、スタッフの自発的な動きから派生した、新しい展開もどんどん見えてきています。今後も平和に、そして謙虚で利他的に、全員が同じ方向を向いて進んでいきたいと思っています。